昨日3月16日 23時36分ごろ、福島県沖でマグニチュード7.3,、最大震度6強の地震がありました。東京都内でも11年前の東日本大震災を思い出すような、長時間の大きな横揺れが発生しました。
この影響で東北地方は元より、震源地からは遠い埼玉、千葉、東京、神奈川でも大規模な停電が発生しました。なぜ?と思う方もいると思います。今回は、その理由をお話します。
地震などの大きな揺れが生じた際、発電所は発電を停止させなければ、タービンなどの設備が傷つき、復旧に長期間かかる恐れがあります。通常、震度5程度であれば緊急停止することはないのですが、昨夜は揺れが非常に大きかった(マグニチュード7.3,、最大震度6強だった)ため、自動停止の機能が働いたと推察します。
下の表は昨年2021年2月13日の福島県沖地震で自動停止の機能がはたらき停止した福島県・宮城県の太平洋沿岸の火力発電所です。今回もこれに近い状況だと思われます。
こうして、地震直後に複数の発電所が同時に停止したことで、電気の供給力が大幅に減少。これが、関東エリアで停電が起こる発端になったと推察します。
停止したのは東京から遠く離れた発電所が多いなのに、東京エリアで停電とは、いったいなぜ?ポイントとなるのは、電気の“性質”です。私たちが使っている電気は、電圧のプラスとマイナスが交互に入れ替わって、波のように流れています。この波が1秒の間に起こる回数を「周波数」と呼ぶのですが、電気を供給する時は、この「周波数」を一定に保つことが必要となります。
周波数を一定に保つには、電気の消費量(需要)と電気をつくる量(供給=発電)を常に一致させなくてはなりません。もし、需要と供給をバランスできず、周波数を一定に保てなくなると、場合によっては広範囲で大停電が発生する可能性があります。
そこで、電気の送配電をおこなう電力会社(東京電力や東北電力などの発電事業者)は、需要が増えた場合には発電量を増やしたり、また需要が減った場合には発電量を少なくしたりといった調整を常に実施してます。この調整がとても大切なのです。
では、電気の供給力が足りなくなった場合はどうするのでしょう。供給力が大きく減ると、周波数が大幅に低下します。その場合、需要を緊急遮断するしくみとして「周波数低下リレー(UFR)」が作動します。
UFRが動作すると、電力系統(電気を送るための送配電のシステム)から需要が切り離されます。つまり、需要を強制的にシステムから切り離すことで、足りない供給力とのバランスを取り、それによって大停電を回避できるようにするのです。
※「周波数低下リレー(UFR)」複数の発電機の同時停止など、供給力が足りなくなることにより大幅に周波数が低下した際に動作し、自動で発電機や需要などを電力系統から切り離す装置。発電機を保護すること、また、連鎖的な発電機の停止などを防ぐとともに、残っている供給力で周波数を制御できる範囲にまで回復させることを目的に、自動的に需要を系統から切り離す。
この「UFR」は、電気を集めて必要な場所へ分配するため電圧を変える「変電所」の単位で設置されていますが、隣同士の家でも異なる変電所から電気が送られている場合があります。そのため「UFR」が作動すると、自分の家は電気が使えているのに隣の家は停電している…という状況も生まれる可能性があります。また、発電機を設置している工場などであっても、変電所単位で需要と供給のバランスが取れない場合には、停電する場合があります。
今回、震源地からはなれた東京エリアで停電が起こったのは、この「UFR」が作動したためです。
関東エリア・山梨県・静岡県東部に電気を送配電する東京電力パワーグリッドと、東北6県および新潟県に電気を送配電する東北電力ネットワークのサービスエリア内は、エリア全体の周波数を一体で運用しています。そのため、地震の震源地がどこかによらず、直接の地震被害がなかった地域でも複数エリアで停電が発生したわけです。
今回、震源地からはなれた場所で停電が起こってびっくりしたという方も多いかもしれませんが、このように、電気の性質を知ることで、停電の理由が見えてきます。「UFR」は、広範囲で大規模な停電が起こることを防ぎ、停電範囲を最小限に抑えるために作動する、ブレーキのようなものなのです。
関東近辺での大地震でなければ大丈夫!と、たかをくくらず、日頃から防災意識を持ちましょう!
ご安全に!
資料出典元:経済産業省資源エネルギー庁