安全衛生情報

2022-02-03 00:52:00

厚生労働省は1月31日、建設現場などで働く請負人(一人親方など含む)の安全を確保するための備品・設備等の周知、有害物を周知する表示義務、退避・立入禁止の措置に関する義務を追加する労働安全衛生規則などの改正案について、労働政策審議会から妥当との答申を得た。主なポイントは以下のとおり。

従業員以外(一人親方など)の安全確保も事業者側が義務を負う

今回の法改正案では、労働安全衛生規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則など11の規則が改正され、事業者側の、自社従業員以外の請負人(一人親方など)に対する安全確保義務が拡大する方針。

これは、労働者の健康障害を防ぐ必要な措置を義務付けた労働安全衛生法22条が労働者以外の者にもおよぶとした建設アスベスト訴訟最高裁判決(2021年5月17日判決)をふまえたもの。

たとえば、次のような点が変更される予定。 

安全確保のための設備設置関係の規定の改正

労働者の作業環境を改善するために稼働する設備は、請負人のみが作業を行うときにも稼働するよう事業者は配慮する義務が生じる。

例:請負人が粉塵作業、石綿等に係る作業、有機溶剤を使用する作業などを行う場合

事業者側は、請負人が当該業務に従事する間、安全確保のための設備(局所排気装置やプッシュプル型換気装置など)を稼働させるよう配慮する義務が生じる。

作業方法、保護具使用などの作業実施上の安全確保に係る規定の改正

労働者の安全確保に必要な作業方法や保護具の使用などについて、請負人に対しても周知義務を設ける。また、実際に保護具を使用する作業員に限らず、当該作業場で他の作業に従事する者全員が周知対象となる。

例:腐食性液体を圧送する作業や、廃棄物の焼却施設における業務の一部を請負人に任せる場合

事業者は、請負人に対し必要な保護具を着用する必要がある旨を周知する義務が生じる。

場所の使用に基づく安全確保(退避、立入禁止など)に係る規定の改正

場所の使用・管理権原などに基づく立入禁止、特定行為の禁止、退避、入退室管理などの措置は、労働者以外の請負人や当該場所で他の作業に従事する者も措置対象に追加される。立入禁止・特定行為の禁止については、表示による禁止も可能。

例:加熱された炉の修理を請負人に任せる場合

事業者は、炉を冷却した後でなければ内部に入ってはならない旨を、労働者以外の請負人にも見やすい箇所に立て看板を表示することで警告する義務が生じる。

有害物の有害性などを周知するための掲示に係る規定の改正

有害物の有害性などを周知するための掲示については、労働者以外のすべての者も措置対象に追加される。

掲示すべき事項は、「有害物の人体におよぼす作用」から「有害物により生ずるおそれのある疾病の種類およびその症状」に拡大するとともに、「保護具の使用義務」を追加する。

例:廃棄物焼却施設における業務の一部を請負人に任せる場合

事業者は、労働者以外の者も見やすい場所に、「廃棄物焼却を行う作業場であること」「ダイオキシン類により生ずるおそれのある疾病の種類、症状、ダイオキシン類の取扱い上の注意事項」などについて掲示する義務が生じる。

 

厚生労働省は今後、2023年4月1日の施行に向け省令の改正作業を進める予定とのこと。